asahi.com(朝日新聞社):芝生シート高線量の小学校、セシウム9万ベクレル 杉並 – 社会
この春に小学校のグランドを覆っていた芝生養生シートから、9万600Bq/kgのセシウムが検出されたっていうニュースです。セシウム9万ベクレル、ってヘンな見出しなんですけどね。単位がおかしいし、総量わかんないし。
それはともかく、先日国が出した基準では、埋立処分ができるのは8000Bq/kg以下ってことになってるので、このシートはこのままでは処分できないってことで現在杉並区の公共施設内に保管されているそうです。で、どうするかっていうと、
環境省は12日夜になって「シート1キロに対し他の廃棄物1トンを混ぜて焼却すれば放射性物質は十分希釈される」と回答し、焼却処分を事実上認めた。これを受け、区は焼却する方向で検討している。
てことだそうです。えーっと…つまり、1000倍に薄めた後で燃やすと。
90000Bq/kgのシート1kgを1トンの廃棄物と混ぜるということは、90Bq/kgのゴミが約1トンできることになります。これがどのくらいの濃度にあたるかというと、原子炉等規制法で定められたクリアランス制度(原子力施設などを解体したときに出る廃棄物のうち、普通の産業廃棄物として処分してもよい廃棄物の放射能濃度)で、Cs137のクリアランスレベル(含まれていてもよい放射性物質の濃度上限)が100Bq/kg(0.1Bq/g)と定められているのでほぼ同じぐらい。つまり、混ぜることで、従来、一般の産業廃棄物として処分できることにしてきたものと同じレベルになるんだから、同じに処分してもいいっていう理屈のように見えます。担当者に根拠を聞いたわけではないのであくまで推測ですが。
じゃあちなみに薄める前の「9万Bq/kg」ってどの程度のものかっていうと、「核燃料物質又は核燃料物質によつて汚染された物の第二種廃棄物埋設の事業に関する規則」っていう法律で、低レベル放射性廃棄物としてトレンチ処分(50メートル以下の深度の地下に埋設して50年間管理)するように定められた濃度とほぼ同じです。
だったらこのシートはそのまま低レベル放射性廃棄物処理施設に運んで埋める方が適切だと思うんですが、こういうことがどんどん増えてきて処理施設がいっぱいになると大変だから、薄めて一般の産業廃棄物に混ぜちゃえ~っていうマジックなんですかねえ。
クリアランス制度というのは、「原子力施設を解体したときに、廃材などを全部放射性廃棄物として管理するのは大変だから、管理しなくてもいい程度の濃度のものは分離して処分しよう」という考え方で、賛否両論ありますが、私はクリアランスレベルの設定基準が間違っていなければ合理的な考え方だと思います。ただし、クリアランス制度は、「高濃度の廃棄物と低濃度の廃棄物を分離して高濃度なものは管理する」ことが前提となっており、高濃度のものを希釈して低濃度にするということは想定していません。
希釈したからといってそこに存在する放射性核種の総量は変わりません。最初から希釈された状態であればそこから放射性核種を取り出すのは現実的ではないので、どこかで線を引いて「この濃度以下は一般の廃棄物として扱ってよい」とするしかないですが、分離できるものは分離して管理した方が当然、良いわけです。ところが今回の一般廃棄物をまぜて希釈するという処置は、分離してあったものをわざわざ分離できない状態にして管理外に放出するということで、放射能濃度は同じでも全く意味が違います。
実際に今回みつかった養生シートからどのくらいの廃棄物ができるかを計算するために、まずはどのくらいの量のシートがあるのか、もう少しニュースをぐぐってみると、MSN産経ニュースの記事によれば、“大きさは「縦24メートル、横16・5メートル」と「縦12メートル、横5メートル」の2種類計9枚。”とのこと。で、芝生養生シートをぐぐってみると、こちらの商品に「1平米あたり50g」という説明がありましたので、大5枚、小4枚ずつだったと仮定して111kg。まあ、およそ100kg程度。これを材料にして100トンの「放射性核種を微量に含んだ」廃棄物を故意に作り、管理外に置くことになるのです。ALARAの原則の「合理的に達成可能な限り被ばく量を低減する」という原則に照らしても全く合理的ではない処置のように思えます。
参考資料
原子力教科書 放射性廃棄物の工学
大学の教科書ですが、原子力施設から出る放射性廃棄物の処理手順や各種基準などについて網羅的にまとめてあります。一読をお勧めします。